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ユーレカの日々[23]「バベルの塔」まつむらまきお

リニア中央新幹線の新型車両のお披露目がニュースになっていた。実際の営業車両の原型となるL0型というもの。5両連結での実験が始まるということらしい。

リニアモーターカーといえば、僕が子どもの頃、雑誌のグラビアページで何度も何度も「未来の鉄道」として紹介されていた。60年代〜70年初頭、アポロ計画や大阪万博などの時代。世の中は未来を夢見ていた。子ども向けの雑誌のグラビアでは、ウルトラマンの怪獣などと並び、宇宙旅行と未来の生活が定番の企画だった。

チューブの中を走るモノレール、地下を走る弾丸列車、原子力鉄道など、当時の様々な鉄道の構想が鮮烈なイラストレーションで紹介されていた。その中でも「リニアモーターカー」は一番人気があった。それは旧国鉄が独自に開発しているという身近さと、原理の分かりやすさだった。

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ユーレカの日々[22]「趣味の時間・仕事の時間」

 

三文未来の家庭訪問(庄司創)というマンガを読んだ。

 

ジェンダーやカルトといった様々な問題を扱った、SFとして非常におもしろい作品だったが、この中でドキッとするような描写があった。

 

 

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ユーレカの日々[21]「愛しのソニー」

1969年か70年、大阪で万国博覧会が開かれた頃の話だ。父が海外に視察旅行に行くことになり、その取材のために一台のテープレコーダーを買ってきた。

 

当時ぼくは小学校3年生くらい。カセットテープレコーダーというモノは知っていたが、その真っ黒でコンパクトな製品は、身の回りにあるどんなものとも似ていなかった。

 

ソニーカセットレコーダー「TC−55」。ソニー好きの人なら、この型番にピンとくるだろう。「55」はトランジスタラジオTR-55を祖先とし、革新的なポータブル製品にのみ冠せられる、ソニーの誇り高き型番だ。

 

極力、凹凸をなくしたアルミのボディ。美しくフラットな面と対比するように、側面には小さなスイッチやメータがギッシリと並ぶ。

単三乾電池4本を収納する部分はカートリッジ式で取り外せ、予備のバッテリーと速やかに交換できる工夫がなされている。

つや消しの黒い立方体は手に持つとずっしりと重い。

 

その存在感は比類無きものだった。当時の家電品は、子どもの目で見てもパーツの寄せ集めであり、その仕組が見て取れる素朴なデザインが主であった。それに対しこのTC−55は、複雑なパネル分割、整然と並んだスイッチ類、その埋め込みや化粧のディテールなど、今見ても完成度高いデザインだ。

 

まるで未来からやってきたような道具。まるで魔法で作られたかのような道具。

 

ぼくはこのレコーダーに夢中になった。何かを録音できるという機能よりも、その美しい形と、そしてたくさん並んだボタンを操作することに夢中になった。開閉部分や取り外し部分を何度も何度も動かして遊んだ。

 

なぜこんな形なのか。何でできているのか。どんな仕組みなのか。

気になってしょうがない。

 

今ならわかる。ぼくはその時、恋に落ちたのだ。

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ユーレカの日々[20]「ヤマトとホウレンソウ」

宇宙戦艦ヤマト。見たことがなくても、名前を知らない人はいないだろう。今から40年ほど前に大ヒットしたSFアニメだ。2010年にキムタク主演で実写映画化され、また昨年より制作されていたリメイク「宇宙戦艦ヤマト2199」が春からテレビ放映されるなど、ちょっとした盛り上がりをみせている。

僕自身もそのリメイク版ヤマトをすでにリリースされているDVDを懐かしく見たり、新しくリリースされたプラモデルを買ったりと、楽しませてもらっている。

 

物語は西暦2199年。宇宙からの謎の攻撃で地球は滅亡の危機に瀕する。そこにイスカンダル星から援助のメッセージが届き、地球最後の宇宙戦艦であるヤマトが敵であるガミラスと闘いながら、イスカンダル星を目指す、というお話。

 

すでに「SFの古典」と言っていいだろう。わかりやすく、よく出来た話である。ベースになっているのは海外SFドラマ「スター・トレック」、そして「西遊記」と「15少年漂流記」だ。これが太平洋戦争の戦記ドラマのテイストで語られる。

 

毎回毎回、ワクワクしながら放映を見た。ぼくだけでなく、中学生男子は皆、夢中になっていた。放映翌日には学校で戦艦の名前やストーリーの予想など大いに盛り上がった。

とにかくあの時代、ヤマトは間違いなく、最先端コンテンツだったのだ。

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ユーレカの日々[19]「デザインはなぜ無報酬とされたのか」

 

先日、大阪の天王寺区が「天王寺区広報デザイナーを募集」したことが、Twitterなどでちょっとした騒ぎになった。

http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/tennoji/0000204704.html

ポスター、フライヤー、Webのデザイン、アドバイスをプロアマ問わずに募る、という物だが、これが「無報酬」ということで、あちこちから批判が相次いだのだ。

 

ぼくの仕事であるイラストの世界でも、なかなか対価を理解してもらえないことがある。

ちゃんとした出版社、代理店ならなんら問題もないが、たまにベンチャー系の企業などからケタ違いに低い条件でのオファーが来ることがある。そういう場合、相場とその理由を丁寧にご説明し、丁重にお断りするのだが、今度はそのケタ違いに低い条件で「学生を紹介してほしい」なんてことを言われ、これも丁寧にお断りする。

デザインの世界でも同様のようだ。デザインに対して正当な対価がなされないという話をよく耳にする。

どうして、デザインやイラストに対して、対価を認めない風潮がいつまでたっても変わらないのだろうか。

 

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ユーレカの日々[18] デスクトップ・マトリョーシカ

 

先日、大学で使っているMacBookのハードディスク残量が40GBほどになってしまっているのに気がついた。はて、何が入っているのだろうと調べてみると、デスクトップに置いてあるひとつのフォルダがやたらサイズがでかい。160GBもあるのだ。そのフォルダの名前は「デスクトップ」。

わかる人にはどういう状況かわかると思うが、わからない人にはさっぱりわからないだろううから説明すると、デスクトップに「デスクトップ」という名前のフォルダがあって、それが160GBあるのだ。

思い出した。授業の時、あまりにデスクトップがちらかっていたので、フォルダを作ってそこにすべて放り込んだのだ。そのフォルダを何処に作ったか忘れないよう、デスクトップに作ったのだった。

じゃあ、その「デスクトップに置いたデスクトップフォルダ」の中で、一番大きなアイテムは何だろう、と思って調べてみると、それは「デスクトップに置いたデスクトップフォルダの中のデスクトップフォルダ」だった。

つまり、前回あわてて、デストップのファイルをひとつのフォルダに入れたのだが、その時すでに、それ以前に同じ目的で作ったデスクトップフォルダが存在していて、それも入れてしまっていたわけだ。ちなみにこれのサイズも100GB以上ある。

じゃあその中の......というわけで、フォルダを掘っていくと最終的に「デスクトップに置いたデスクトップフォルダの中のデスクトップフォルダの中のデスクトップフォルダの中のデスクトップフォルダの中のデスクトップフォルダ」5階層デスクトップフォルダ・マトリョーシカが確認された。なかなかに壮観である。

普段、アクティブな仕事のファイルはすべて、Dropboxにフォルダである程度整理してるので、基本、デスクトップに置いてあるのは一時的に保存したファイル......のはず。ばっさり捨ててしまってもいいようなものなのだが、なんかの時に必要なファイル、というのが混ざっている可能性もある。そう思うとなかなか捨てられないし、かといって分類整理するのも面倒なので、こういうことになってしまうのだ。

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ユーレカの日々[17]「あかるく楽しい戦争」

先月末、ディズニーがルーカスフィルムを買収したことが報道され、世界中のスターウォーズファンを驚かせた。

ルーカスは変人だ。最初のスターウォーズで成功したあとはハリウッドを嫌い、監督組合も脱退し、自己資金でスターウォーズシリーズを作り続けた孤高の人だ。そんな彼が自分の会社まるごとディズニーに売却するとは思ってもいなかった。

ぼくにとって、ぼくの世代にとって、スターウォーズはとても特別な映画だ。

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